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Kumpei Shiraishi's blog

物理、プログラミング、クライミングに関する雑記

日本で買うクライミング用品はなぜ高い?

現在私は、フィンランドに留学している。そして先日、ヨーロッパの有力なアウトドア用品通販サイトbergzeitでクライミング用品を購入する機会があった。金に汚いと思われるかもしれないが日本の定価を調べて計算したところ、今回は56%も安く購入することができた。

bergzeitはヨーロッパへの発送のみなので、日本から購入することは難しいが、最近は個人輸入で安く登山用品やクライミング用品を購入する人が増えているようである。また、海外旅行などの際に現地で安く買う人も多いだろう。こうした人々が共通して持っているのは、「日本の山道具は高い」という考えである。

この記事では、私が今回購入したクライミング用品に関して、ヨーロッパ価格と日本価格を比べてみたい。

なお、この記事で示した定価は2016年4月4日調べのものであり、使った変換レートは1ユーロ = 127円、1米ドル = 111円である。

価格表

品物 輸入代理店 bergzeit定価 輸入代理店定価 マージン率 備考
Petzl Sirocco アルテリア 9,599.93円 15,300円 59%
Petzl Grigri2 アルテリア 7,465.06円 12,000円 61%
Black Diamond Oz quickdraw ロストアロー 2,128.52円 2,400円 8% BD定価2,214.45円
DMM Phantom Screwgate carabinar ケーイーエム 1,488.44円 3,200円 115%
Wild Country Dyneema Sling 10mm 60cm モンベル 955.04円 1,300円 36%
  • 定価は全て税抜き価格である(bergzeitでは19%の付加価値税、日本では8%の消費税が加算される)。
  • マージン率とは、「(bergzeit定価と輸入代理店定価の差分)/(bergzeit定価)」で計算され、「ヨーロッパ価格の何割の下駄を履かせて販売しているか」を表す。
  • ただし、アメリカ企業であるBlack Diamondに関しては、備考に示したBlack Diamondウェブサイト上の定価を用いて計算した。

コメント

メーカーごとに見ていこう。

まずはフランスのクライミング、高所作業用品メーカーのPetzl。後述するBlack Diamondと並び立つ二大巨頭といった趣きがある。日本への輸入を請け負うのはアルテリアである。今回は軽量ヘルメットSiroccoとオートブロックビレイデバイスGrigri2を買ったが、どちらもヨーロッパ価格の60%くらいを上乗せして日本で販売しているようだ。

Black Diamondはクライミング用品メーカーの最大手と言っていいだろう。ヨセミテのクライミングがルーツなだけあって、ネイリングやビッグウォール関連のギアに関してはBDの独壇場である。このようなニッチなギアばかりではなく、カラビナやスリングを比較的低価格で販売しているので、ユーザーの裾野は広い。日本において、この低価格を実現しているのはロストアローだ。他にはクライミングシューズのScarpaやロープのBealなども扱っている。ロストアローの御大は山学同志会の坂下直枝、社員には倉上慶大、横山勝丘など有名クライマーの名も散見される。スポンサードクライマーに小山田大がおり、とにかくまぁ有力な代理店なのである。坂下直枝とBDの大ボスYvon Chouinardとのコネクションもあるようで、比較的良心的と言われる価格設定だ。実際、マージン率は抜きん出て低い。天晴れロストアローと言ったところか。

ウェールズのDMMを日本で取り扱うのは、ケーイーエムである。他にはロープで有名なedelweissも請け負っている。今回買ったPhantomに関して言えば、驚くなかれマージン率100%以上。ヨーロッパでクライミング用品を見ていると、DMMが飛び抜けて高いメーカーであるという印象はない。しかし日本では「DMM=かなり高い」という図式が出来上がっていると思う。その理由の一端はここにあると見て間違いないだろう。

最後に、ピークディストリクトの老舗Wild Countryである。輸入は彼のモンベル。モンベル本体は低価格で色々売っているという印象があるが、Wild Countryについても同様のようである。マージン率は、(ある意味異常な)ロストアローよりは高いが、アルテリア、ケーイーエムよりは低くなっている。

まとめ

Disclaimerとして、今回比較したクライミング用品は、各メーカーのラインアップのごく一部である。また、提示した「マージン率」という数字は、クライミング用品の値段を評価するのに多分に不適当である可能性はある。マージン率の分母に用いたbergzeitの定価に関しても、bergzeitがヨーロッパのほぼ全域をカバーする巨大な通販サイトであることを考慮すべきである。日欧のクライミング人口は桁違いで、それに伴う市場規模も全く異なる。さらに、世の中一般の輸入代理店がどれくらいの下駄を履かせているのかも、私はよく知らない。

しかし、そうは言っても、私にとっては驚きの数字だった。日本語でサポートを受けられるという利点はあるにせよ、これを考えると日本でギアを買うことは出来ないなあ。